滝の定義 の補足

 内容
1。滝の定義(原理原則)
2。滝の定義(現実例とのすりあわせ)、滝モドキの滝、人工滝・改造滝、
3。連瀑か段のある滝か など
 1。滝の定義 原理原則
昇竜の滝
農業用水を枯れ谷に落とし
た結果できた人工の滝
崖が自然なので
騙されやすい滝モドキです
千葉県大多喜町小沢又
粟又滝遊歩道より
 滝の定義   「滝」とは、「河川にできた河床の段」をいいます。

  段が何m以上なら滝だというきまりはありませんが、ここでは1〜2mぐらいより大きいものを対象にすることにします。
ただ、世の中には滝もどきの段がたくさんありますので、補足します。

このHPの房総の滝の一覧リストに入れるかどうかで
考えたことです。  一覧リスト参照

 ● 段を落ちる水流が、自然の川、湧水であることを滝の条件とします。

用水路など自然じゃなくなった水流はたくさんあり、それが自然の崖や、人工の崖から落ちている滝モドキの滝はたくさんあります。
 たとえば、粟又滝の遊歩道など沿いには、この手の滝がたくさんあり、観光用の名前がついていますが、そうゆうものは省きました。→写真参照。

  この種の「滝モドキの滝」は一見立派なのですが、洪水時に砂礫が流れず、水しか流れないので、滝面の微地形等も未発達で、本来の滝と地形が異なっています。 

 ● 水流が常時ある程度あることを滝の条件とします。

 普段水が無いいわゆる涸れ滝は省きます。また、流域が小さく普段は水がチョロチョロ程度の大雨が降らないと水量が無い滝も省きます。
 このような滝まで入れると、滝の数は無限になってしまいます。
 もちろん、台風の大雨の時には、それこそ、山肌のすべての沢が滝と化します。ですが、一覧で取り上げている常時水流のある滝は、そうゆう一時的な滝とは地形が異なっていますので一緒にしないことにします。
 ● 信仰や歴史のある滝は、滝モドキでも滝の仲間にしよう。
 
鶴巻滝
上白狐の川廻し滝
 このHPが千葉県の地誌、景観資料でもあるので、滝モドキだけど、一覧リストにいれた滝があります。
 下総地方の滝や、君津市花輪の滝、富津市国見の滝などの人工の滝で、地誌類に名前があげられているものです。
 滝を地学的な滝のみに限定するのは、滝の保全とか保護とか考えても得策じゃないでしょうし、ココロが狭いよね。
 そんなわけで、下総地方にある、水行のための滝のように、「滝を作るのが目的で導水して作った人工の滝」については、水が自然の湧水や河川水である場合には掲げました。
 さすがに、公園の造園のための滝は入れてありません。

●写真説明(上) 鶴巻滝
 海上町見広にある。右手50mの所に飯岡層と香取層との境から湧く豊富な湧水があり、その一部を導水して飯岡層の部分で落とし、水行のための滝を作った。写真の不動明王像の後ろの溝が滝の跡。いまは、廃止されている。
 要するに、導水して人工の崖に落としたので
人工の滝。滝モドキです。
 ですけど、信仰のものですから、水も落ちてないけど、滝のリストに入れました。


  なお、千葉県の特徴である「川廻しの滝」は、河床の段は人工ですが、水流が自然のものですので、滝の仲間に入れてあります

●写真説明(下) 上白狐の川廻し滝
 富津市上白狐にある。川が人工のトンネルから出て滝になっています。
 川廻しとは、千葉県特有の河川工事で、千葉県各地にみられる穿入曲流地形を利用して河川を短絡した人工地形。
 近世中心の水田開発を目的とした農業型の川廻しと、近代中心の林業開発を目的とした林業型の川廻しがある。短絡の結果、滝ができることが多い。
 この滝は農業型の川廻しでできた滝の一つ。,白狐川を短絡し、三浦層群,天津層の山にトンネルを掘って新流路としている。落差5m。近年のゴルフ場に伴う河川工事により破壊されてしまった。そのうえ、ゴルフ場も中途で挫折。

その2。滝の定義 現実例とのすりあわせ
 補足1、小流域の水の少ない滝はどうします?

「河川」=「すべての谷」としないで、「常時水流のある谷」とします。
台風が来て、豪雨になれば、山地斜面のあらゆる谷はすべて立派な水路になり
全部、滝ができてしまいますが、実用上滝が多くなりすぎますし、そんな小流域の常時流水が無い谷と、常時水流のある谷とは、地形の成り立ちも違いますから、
このような、常時それなりの水量のない谷の段は、「滝」の仲間に入れないことにします。

 滝と呼ぶには、足りないところがあるので、滝タラズ と呼ぶことにします。

ただ、滝タラズと滝の中間線は、明快じゃないですよね。この判別としては、
(1) 流域面積がある値以上か以下かで区別。
(2) 2.5万地形図上での、谷の次数が、ある値以上か以下かで区別。
 (2) の方が簡便で、いいと思いますが、これは別項で(工事中)・


補足2。谷のつめあげにある、涸れ滝はどうしますか?

補足1と同じです。滝タラズにします。こうゆう滝の場合、土石流や崩壊のガリーだったりして、常時水流のある部分とは、谷の成り立ちが違いますから。


 滝タラズは、何が足りないかで、さらに細分されますが、それは、長くなるので、こちら(滝の景観分類の付録)に書きました。

補足3。人工の滝、改造の滝の考え方は?

世の中には、人手の加わった滝は、どっさりあります。歴史的見地から、あるいは、都市計画の観点からみれば、枯山水の水のない滝も滝だし、デイズニーランドの滝も滝でしょう。立場によって、違ってくるわけですが、この論考では、地学の立場で滝の境界を定義します。
 整理すると、以下の2×2通りに分けて、決め込むしかないですね。
   水が、   河川か人工か。 
   段(崖)が、人工か自然か。

注、水が、河川か人工か。
この区別、洪水があるかどうかでわけます。農業用水路やダムの排水路は入口で規制されているので、河川じゃなくなっていると考える。

段(崖)が、人工か自然か。
この区別、自然の滝の崖を加工、改造した場合、自然の滝の崖だが、他の川の流路を替えて流し込んでいる場合、全然、川が流れてなかった崖に他の川の流路を替えて流している場合 などいろいろの場合があります。

この論考での滝の範囲。
   水が自然 + 段が自然 →滝・・・・水量や高さが不足していると、滝タラズ
   水が自然 + 段が人工による →これも滝ですが →
加工・改造滝
   水が人工 + 段が人工でも自然でも →滝モドキ。

     
→農業用水の末端を、自然のガリーなどに流すと、一見素晴らしい滝ができるが、これは滝モドキ。 好例は、養老渓谷の昇竜の滝。水量の割に滝の地形発達が悪い滝になるので、おかしいと分かる。
 
補足4.滝モドキや滝タラズだから、価値が無いということは無い。できかたが違うものだというだけです。

 たとえば、滝モドキのなかには、京都の清水寺の音羽の滝のように、導水して作った滝だが、いわれのある滝も沢山あります。
 人文科学で「滝」を定義したら、人工で水が流れない、枯山水の滝も立派な「滝」ということになります。・・・まあ、どうゆう立場で定義するかということですね。

 というわけで、歴史的な経緯があったり、信仰目的等による自然の水、または、自然の段を利用した滝は
人工滝として、このhpでは、紹介の対象にしています。
 というわけで、最近の公園の造成滝は、歴史がないので、対象外にしてます。 千葉県のディズニーランドの滝は、対象外というわけですね。
 また、信仰目的で作られたものでも、人工の水、人工の段(水行やるお寺にはよくある)の滝は、滝に入れない。

 これだけは言いたいけど、観光地で、つい最近作った人工の滝(滝モドキ)を、自然の滝として人に見せていることが、よくありますが、ペテンですよね。

補足5。鍾乳洞などの地下の川の滝は?

 同じ、自然の水ですが、地表の河川と地下の川との挙動は違うと考えられるし、景観価値も別物ですからので、「地下の滝」とでもして、滝の仲間には入れない方が良いと思います。
3。連瀑か段のある滝か
 1つの段のある滝と、2つの近接した滝とはどこで分けるか?

滝が上流に後退していく過程で、滝の表面に段ができ→分裂して→上流側の滝がより早く動いて、2つの別の滝になります。
 ですので、上の段のある1つの滝と、近接した2つの滝は、地形変化の過程では連続したものであると考えられますが、その違いは、落下する水流が作っている地形か、平らに流れる部分をはさむ2つの落下する水流が作っている地形かの違いですから、地形的には、滝あるいは段の間の平坦な部分が、洪水時水深より長くなれば、2つの滝とします。
 滝上の流域面積によって、この長さは違うでしょうし、後述する面滝と線滝では、線滝の方が長くなるでしょうが、房総だったら、おおむね3〜4m以上平坦部分があれば、2つの違った滝とします。
 他地域でも、10mぐらいあれば、別の滝にしたほうがいいのでは。

滝topへ    定義topへ   滝の地学早わかり・滝の定義へ