『川廻し』 とは  --上総地方特有の河川工事--

        <川廻し地形模式図>
   川廻し前     川廻し後    鳥瞰図

 川廻しは、千葉県の上総南部の丘陵を流れる川にみられる特殊な河川曲流短絡工事です。
 水田型の川廻し林業型の川廻しの2タイプがあります。一般に知られているのは水田型の方ですので、そちらをまず説明します。

<水田型の川廻し>
 この川廻しは、関東では房総半島のみにみられる特殊な新田開発の一タイプです。川の曲流部分を短絡し、今まで川だった所を水田化する方法で、近世〜明治にかけて房総丘陵各地で450ケ所以上で行なわれました。これらの、短絡された川や水田になっている昔の流路が、今でもはっきりした地形になって残り、先人の水田開発への想いを伝えています。
 図のように、穿入曲流した川があり、そこを、トンネルか切通しで短絡して、旧流路部分を水田化する工事です。新流路(トンネルや切通し)をシンカワ、水田化される旧流路をフルカワ、切断された曲流部分をナカジマと呼ぶ。フルカワは客土や堤防でかさ上げされ、普通の洪水では浸水しない。シンカワのトンネル高が(崩れてなければ)普通の洪水水位を示します。
 千葉県外のまともな川なら、一発でぶっつぶされてしまいそうな、このような、川を馬鹿にした新田が作られた理由としては、1。上総丘陵の川はすべて、地史的にこのような穿入曲流河川であること、2。岩質がやわらかくて人力で掘れること、3。緩流河川で、洪水水位も高くない、御しやすい河川であること。等の上総地方特有の自然条件があったことがあげられます。

 川廻しのトンネル 君津市鍋石の川廻し

 <川廻しと川廻し地形の定義>
 「川廻し」とは、あまり知られていない言葉かもしれない。房総では地元の人々が日常に使っている言葉だが、勿論、厳密な定義はない。私は、水田型の川廻しを以下のように定義しています。
 「川廻しとは、主に上総地方南部の丘陵地を流れる河川で、江戸時代以降、新田開発を念頭において行われた曲流河道の曲流短絡工事」のことである。
 「川廻し」工事の結果、トンネルや切通しを流れるように付け替えられた新たな川や、水田化された旧曲流跡などの特徴ある地形が作られた。これを「川廻し地形」と呼びます。
 川廻し地形は、上総地方では各所にみられるありふれた地形です。皆さんも、上総の川を歩いた方は、トンネルから川が流れているのをみたことがあるでしょう。観光地になっている養老渓谷の弘文洞のトンネル(最近落ちて切り通しになってしまったが)も川廻しのトンネルです。

 林業型の川廻しは、開墾場滝の解説(ごめんなさい工事中です)を見よ。

千葉県外では、新潟県の魚沼丘陵を流れる穿入曲流河川で、同様な曲流短絡工事が行われていて、そちらでは、「瀬替」と呼ばれています。他にも、例があるかもしれません。関東地方にはほとんどないと思います。


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