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下総地方003●東庄町東今泉 双峰飛泉 探訪    

 滝おやじ記す。 実は、新情報で以前紹介した情報を、再録しました。すでに見た方にはごめんなさい。この滝のポイント:忘れ去られ、荒廃して自然に戻った滝です。
 --------目次--------
  見どころ:
 その1 滝のいわれ 場所 →すぐ下です。
 その2 双峰飛泉の成因について  →ジャンプ
 その3 すごく変った滝面形と、その理由 →ジャンプップ
  データ : →こちらにジャンプ
 
その1。滝のいわれ 場所。        
 双峰飛泉は、東庄町東今泉所在、落差3mの自然の滝に加工した滝だったのですが、戦後は訪れる人もなく、すっかり忘れられていました。
 この滝を並木健祐氏の探索をきっかけに近年再発見しました。そうしたら、皆から忘れられている間に、滝が変化していたんです・・・。 という話はあと。

まずは、滝のいわれやなんかからいくと・・・
 大正年間の香取郡誌に以下のように書かれています。
『雙峰飛泉  大字今泉字雙峰の山間に在り、高二丈濶一尺許。夏時来り浴するもの多し、郡中固より高山峻嶺なく随て又飛瀑懸泉に乏し、故に泉の如きは甚だ小規模なるも本郡に在ては、又は見る稀れなる所なり。』
名前のいわれは、双峰は所在地の小字、飛泉は、泉が滝になっているんだということが分かります。香取郡では珍しいんだけど、まあ、たいしたことないよ、と書いてありますが、
行ってみると結構面白い滝です。
双峰飛泉位置図
(国土地理院2.5万地形図小南)

 定かな道はありませんが、図の双峰飛泉の北の丁字路の少し先から踏み跡がある。滝の下で川に降りること。滝の上にも簡単に廻れるから行って見てください。
台地を刻む浅い谷の谷頭から湧いた水が少しの間水路になった後、滝を作っています。

地元ですら、ほとんどかえりみられていない滝(泉)ですけど、房総の名水になったり、町の指定文化財になったりするぐらいの価値は軽くあります。

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●その2。双峰飛泉の成因
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 双峰飛泉の成因                (双峰飛泉topへもどる)
双峰飛泉のある川は、下総台地を侵食して、利根川沿岸平野に続く小さな谷で、その断面は、図のようになっています。
砂層(下総滝群)と泥層(上総層群笠森層)の境から常時水が湧き、川の水源になり、泉のすぐ下流で滝(飛泉)になっています。
分類しちゃうと、湧水型の滝。
台地上の浅い谷底の湧出水が作る、新期侵食谷の谷頭遷急点にある。
地層の境が地形(滝)に反映しているわけですが、この地域は、地層がほぼ水平なので、地層の境の標高30m付近で、滝だけでなくてその他の地形も変化しています。
右のこのあたりの地形の模式図を見てください。
●1。川の水源の高さ
●2。谷にたくさん作られている用水堰の高度
●3。水田の作られている小さな谷や緩傾斜地の上限高度。
●4。台地を削る谷の侵食前線高度
などなど。→高さが同じ→地層の境に
ある。という訳ですね。 
下総台地周辺には、この手の、泥と砂の地層が黒幕になっている地形がたくさんあり、一見関係ないような現象が、実は関連しているということがよくあります

地質が地下水を決め、地下水が地形を決める、という関係かな。地層が単純なので、その関係が一目で分かる場所だというわけです。


地層の色は上の図と同じ。
左の谷が、双峰飛泉のイメージ。
右の谷は、より大きな谷で、用水堰が作られている。
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その3。すごく変った滝面形。この理由。→自然に戻った滝。    (双峰飛泉topへ)

双峰飛泉の滝面と最近の変遷          (双峰飛泉topへもどる)

これが双峰飛泉の滝面です。
「何だかよくわからん」ですよね。

滝が見えないですよね。

実は、滝は煙突状の穴が4つ繋がった形に滝が掘り込んでいて、落ちている水が下流からはちょっとしか見えないのです。
 写真の中央の白い筋と、下の白い点が滝面の水流です。写真は掘り込み部分の入口から覗いた光景です。

この滝の、平面図と谷の横斷方向と縦断方向の断面図を下の図に書きました。

このタイプの滝面は、私の滝面の分類では、線滝、隠れ溝型滝面という名前で分類しています。
そして、この掘り込み部分は、最近できたものです。

  (写真撮影・提供 並木健祐氏)

 上段:谷の横断方向の断面
 中段:平面図 隠れ溝型の掘り込みに注目
 下段:谷の縦断方向の断面
 
 地層の色は、双峰飛泉の成因の図と同じ。
図を見て頂くと分かると思いますが、

図の6m分が隠れ溝の部分。それより下流の幅が広くなっている部分が、隠れ溝を掘り込む以前の滝と谷です。

下流の谷には、Aの地点に2基の石碑(江戸時代の文久1年の不動明王石碑と明治以降の別雷命の石碑)があり、江戸時代〜明治(おそらく、香取郡誌の時代までの)谷と考えられます。

6mの隠れ溝の部分は、断面図のBで示した所に、隠れ溝作成以前の導水管が落ちていて、隠れ溝が大正以後(おそらく戦後)に作られたものであると分かります。
 ●結論
江戸時代に作られた霊場の滝(当時の滝面形平凡な円弧状)が、戦後ほったらかされてる間に、滝面に隠れ溝が掘られ、形が変わってしまって、別の形の滝へと変化しつつあるということですね。

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高さ:2.5m。
成因:湧水型の滝  人工化された後、荒廃し自然に戻る 滝面: 線滝 条瀑 隠れ溝型
地層:下総層群のシルト層
位置:経度35゜48’12” 緯度140゜42’16” 
    東庄町東今泉 小字 双峰

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