滝の地学早わかり       滝topへ   滝の地学早わかり目次へ       

1. 未知の地形、滝
  a. 探検の楽しみ 
千葉県の滝の調査黎明期
富津市高宕急駟滝27mの上部を登る 
1980年君島安正氏撮影
観光でない滝めぐり
滝の地学観察会 富津市志駒 白糸滝の下滝
1999年 

滝は、川の地形のうち最も人気のある地形でしょう。
 『日本の名瀑』といった写真集や案内書も出版されていますし、『日本の百名瀑』というのも設定されています。『□□県の滝』といった県別の案内書も少数ですが出版されています。
私が担当している「滝めぐり」観察会でも多数の参加者がこられます。
 では、滝の良さとは何でしょう。水と岩と植生の織り成す美観、水の動きを表現する写真の素材、登る楽しみ、信仰の霊地としての特殊性など多くのことがあがるでしょう。
しかし、案内書の著者や千葉県の滝の愛好者が第一にあげる滝の楽しみというのは、未知の滝を探す探検の楽しみだと言います。

 もっとも、未知と言っても地元の人には当然知られていました。そもそも、房総の川は、水の利用を通して古くから人間の活動と深い関係をもっています。

 そのため、滝も人間の生活にかかわりをもち、人間による川の利用・川の改変の場となったり、あるいは、水神の霊地として信仰の対象となったりしてきました。

 しかし、滝は、地形図(2.5 万などの)をみてもその大部分は滝記号がなく、地図には示されていません。それだけに、沢登りの対象になっている川にある滝や、昔の地誌などに名勝として、あるいは信仰の対象地として記述されてきた少数の滝を除くと、地元の人しか知らない、知られざる滝が多く残されています。

 川歩きが好きで、探検がすきな方なら、まだまだ「未知の滝発見」のチャンスがあります。もっとも、「知られざる滝の下で人知れず野垂れ死」ということもかなりありえますが。 
 b. 房総には200以上の滝がある 
滝人間、木平氏の滝所在調査記録、
2001.6.20
新発見の滝が多い。天津小湊町神明川流域

そんなこんなで、滝のありそうもない千葉県でも滝好きの方が調べて下さった結果、たくさんの滝があることが分かってきました。
 大きな滝はなく、落差も最高30m程度で、水量も多いとは言えません。しかし、人のあまり立ち入らない緑の森林に覆われた渓谷に懸かる滝は、なかなか魅力的なものです。
 これらの滝は、大正年間の県内の郡誌に書かれていたものや、私の見つけた滝もありますが、一覧表に示した、君島氏はじめ数人の滝愛好者が房総の川をさぐり見つけ出した新発見の滝が沢山あります。
 今でも、数が増加しつつあり、現在の所は200 個以上の滝が知られています。

 というわけで、房総では大体の滝の所在は分かってきたといえますが、未発見の滝がまだまだ残されています。

 注、千葉県は小さい川にも滝があるという特徴がありますが、やはり、山が低く・浅く、全国的に見れば、滝のごく少ない県に属します。他の県の滝の数はこんなものではおさまりません。
 c. 滝の地学  

 しかし、滝の未知なところはその所在だけではありません。もっと未知なのはその内容です。
 実は、滝について特にその地学的な意味について一般の方々にはほとんど知られていないと言っていいでしょうし、学術書もほとんど書かれていません。 
 そのためでしょうか、滝の愛好者の方も、地学的に滝をみた方は少なく、今までの滝の本の多くは、滝そのものについては主観的な感想を述べているだけと言えましょう。
 つまり、滝が美しい、すばらしい自然物なことは確かですが、ではどんな自然なのでしょうか?。 滝は川の自然の象徴などということもありますが、では何を示しているのでしょうか。これらについて述べた本は今の所ありません。
 そんなわけで、滝の地形を中心に、定義・分類・成因・変化・分布といった滝の地学的な自然について私の考えをまとめてみました。
 滝を見る時に、あるいは、他の地形を見るときに参考になればと思います。

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