鴨川市内浦 中沢の滝 記録カード     滝記録カード目次に戻る  HPtopへもどる
 ● 滝一覧リスト とのリンク
●遷急点名 中沢滝の瀑布帯   ●水系名 大風沢(おおびそ)川水系 ●立地沢名 中沢
中沢の滝 石井良三氏撮影・提供
 ●概要
 大風沢川源流にある、小さいが滝壺形状が面白い滝。
 水質もきれいで、滝の下流では、紅藻で覆われた赤い河床も見られる。

 内浦県民の森が出発点だが、位置は県民の森の外にある。道はなく、30分ほど川歩きが必要。
 ただし、内浦県民の森のある大風沢川源流は、ヒルの名所なので、見に行くのなら、季節を選ぶなり、対策を十分講じるなりして出かけてください。

 2.5+0.8+1mの3連の滝からなる、比高4.5m・長さ12mほどのごく小さな瀑布帯である。
 厚い砂層の中に薄い泥岩層が挟まれている地質で、急斜した逆層。滝の段は泥岩層に良く対応している。
 下滝2は、富士山型滝面で、ちょっと珍しい。
 遷急区間立地の面でみると、砂泥互層を下刻している河川では、泥岩層が硬岩として作用するので、泥岩層部分でコの字形の曲流を作る。
 その曲流先端のコの字の縦棒に当たる部分が、泥岩層を横断する部分で、直線瀑布帯を作っていると解される。

 形状の面白い滝壺は、下滝1の滝下にあり、下滝2の頂上滝壺となっている。
 砂岩層にあいている滝壺で、滝壺側面部が、流下方向、側方方向に大きく抉られていて、軟らかい岩石であるために、水流が滝壺を形成する際にどのような形を作りたがっているのかを良く示している。


●所在地:鴨川市内浦 →大体の位置はこちら
●難易度、4 やさしい沢歩きで滝までいける。 
●2.5万地形図名 2.5万 天津小湊
●緯度経度〔世界座標〕 N35度10分02.3秒 E140度11分50.1秒
●落差 4.5m 
●流域面積 0.17k
u
●岩質 急斜した砂泥互層(砂勝ち) 逆層。
●地層 安房層群天津層
●成因 支流型の滝
●変遷 砂泥互層での曲流形成初期。曲流先端の泥岩層を 横切る直線河道の直線瀑布帯。
      当初の滝から3つの滝に分裂。昇順型瀑布帯。
●滝面
 本滝 2.5m 簾瀑 面滝壁状急斜・片溝型副滝形成初期・部分滝壺跡あり・全面滝壺 
 下滝1 0.8m 壇瀑 面滝壁状急斜・片溝型副滝形成初期・部分滝壺跡あり・全面滝壺
 下滝2 1.0m 壇瀑 面滝半円錐形緩傾斜
●年代・同期: 年代・同期 内浦県民の森内のダルマの滝と同期らしい。
●概略位置図 ⇒所在地形図はこちら  
●行く道ルート    
●発見史・文書

 う沢喜久雄・鵜沢幸子(2004)滝の旅人41回 「ぐるっと千葉2004年5月号」で、名称「ナーザの滝」として紹介されたのが、最初であろう。のちに、『ちば滝めぐり』(2009) p78に再録された。
 紹介文の滝記載は、『・・・二つの深い壺を持っていて美しい。上から5.5m、2m、1.5mの落差で三段に連なっている・・・』とある。 →筆者注} 滝の高さ記述は、過大。
滝・遷急区間の成因、位置と地形面との関係

<遷急区間の位置づけ>
 河床縦断が未作成。段丘面との対比はついていない。恐らく 沼T期の段丘と対応する者と思われる。

<滝の立地と変遷>
 遷急区間は、3連の滝からなる、比高4.5m・長さ12mほどの小さな直線瀑布帯である。
 地質は、厚い砂層のなかに薄い泥岩層が挟まれている地質で、厚い砂層のみの部位と、薄い泥岩層を何枚か挟む部位とがあり、遷急区間とその前後の河道は下図のように、泥岩層を挟む部位と対応している。
 遷急区間立地の面でみると、砂泥互層からなる山地を下刻している河川では、泥岩層が硬岩として作用する。 
 下刻が下流から進み、泥岩層部分にくると、比較的堅い泥岩層を掘らずに、砂岩層を下刻する結果、河道が泥岩層と砂岩層の境に沿って変化し、更に、泥岩層も彫り込まれると地層の走向に直行するように最短距離で横断するよ河道が固定される傾向がある。
 この結果、平面がコの字型(あるいは逆コの字型)の曲流河道が形成される。この河道は、その後、遷急区間の移動に伴い、平坦な河床に変わり、平面形もコの字からΩ形に変化すると考えられる。
 この瀑布帯は、コの字型の形で、泥岩層を横断する部分に、単一の滝から分裂して3連に変化して直線瀑布帯を作っているので、地形変化のごく初期の形と解釈される。

滝・遷急区間mの変遷、滝面の観察

 昇順の直線瀑布帯で、総比高4.5m 全長約12m、主滝・下滝1、下滝2(2.5+0.8+1m)の3連の滝からなる。
 地質は、厚い砂層の中に薄い泥岩層が挟まれている地質で、急斜した逆層である。
 各滝の頂上が、泥岩層に良く対応している・・・縦断図参照。
 また、下滝では砂岩層が厚く、砂岩層の滝面特有の上に凸の断面が見られる。

各滝の滝面から読める地形変化は下記。




<滝面各部 画像>

 画像は、友の会滝観察会の際に撮影。
  
本滝滝面

本滝 2.5m 簾瀑 面滝壁状急斜・片溝型副滝形成初期・部分滝壺跡あり・全面滝壺
 逆層の泥岩層主体の滝面で、逆層の滝面特有の急斜した滝面をなしている。
 滝面下部に破壊された部分滝壺の掘り込みが残っていて、滝面が以前は突出していたことを示す。
 滝下の滝壺は、深さ1m程度らしく、そんなに深くないが、それでも下流の下滝1の高さより深い。
(画像 石井良三氏撮影提供)
下滝1 滝面

下滝1 0.8m 壇瀑 面滝壁状急斜・片溝型副滝形成初期・部分滝壺跡あり・全面滝壺
 頂上部に薄い泥岩層があるだけで、滝面のほとんどは砂岩層である。
この滝にも、下部の全面滝壺に連続する滝壺の掘り込跡があり、滝下の全面滝壺の水面高さが高かった・・・下滝2の高さが高かったことを示している。
 本滝を落下する洪水時水流による滝壺拡大と、下滝2の前面を浅く掘り込んでいる小規発達により前後から侵食を受けているので、下滝2は早晩破壊され、滝壺が干上がる形で滝が後退すると思われる。

(画像 石井良三氏撮影提供)
下滝2 滝面

下滝2 1.0m 壇瀑 面滝半円錐形緩傾斜・・・富士山型の滝面
 下滝1の全面滝壺が、頂上滝壺になっている。ほとんど砂岩でできていて、頂上付近にごく薄い泥岩層があり、滝を形成しているが、侵食されてかなり高さは低下している。
前述した、頂上滝壺の水位低下の原因であろう。
 一見、単なる緩傾斜の滝に見えるが、平面形が半円錐状(富士山型とも呼んでいる)で、類例の少ない形である。
 滝壺の影響で、洪水時に、均等に水流が溢流し、水流が集中しないため、また、低水時にも滝面が乾くことがないために、滝面が均等になり、半円錐形の滝面を形成したと考えられる。

(画像 石井良三氏撮影提供)
滝下広場

滝下広場・・・発達が悪い。
 富士山型の滝は、河道が直角に曲がる場所にあり、滝下広場は元々広い河床のままで、普通の滝のように円形の滝下広場が形成されないという特徴があると思われる。

(画像 石井良三氏撮影提供)
下滝1の滝壺=下滝2の頂上滝壺

下滝1の滝壺
 形状の面白い滝壺は、下滝1の滝下にあり、下滝2の頂上滝壺となっている。
 砂岩層に掘り込まれた滝壺で、滝壺側面部が、滝壺の上面よりすべての側方方向に大きく抉られていることが判る。
 軟らかい岩石であるために、水流が滝壺を形成する際にどのような形を作りたがっているのかを良く示している例であると考えることができ、滝壺の底部で水平に回転する方向に侵食が働き、円筒形でなく、まさに壷形にえぐれた形を形成しようとしていると解釈される。

(画像 石井良三氏撮影提供)
  <その他>赤い岩

河床の紅藻 

紅藻が付着して、赤くなっている河床。

水質が綺麗なこと。
水流が強く当たらないことが条件のようである。


(画像 石井良三氏撮影提供)
●歴史・利用

 <途中にある、川廻し>

 位置は、ルート図参照

 中沢の下流が大風沢川本流に落ちる部分を川廻し。
 シンカワは、トンネルで本流沿いの道の下を通り、滝となって落下。
 フルカワ跡の湿地は、林道沿いに見られるが、荒廃して、草茫々である。  

(画像 石井良三氏撮影提供)
●記録

探訪日 2008/11/26 千葉県立中央博物館友の会観察会2010/03/28 
作成日 2010/07/28

  滝記録カード目次に戻る   HPtopへもどる