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「房総の滝---地史の現代史---」     2005/07/21
千葉市の社会教育施設のナイトセミナーということで、「滝の見方」について、話した話題の要旨です。
<話の予告>
 滝は、「見れどもみえず」の代表的な地学的自然で、その見方は、審美的なものに偏り、科学的な見方があることすら知られていません。
 千葉県の滝を例に、滝の見方を紹介し、滝を含む自然の景観について、一味違った見方で見るようになってもらいたいということでお話しします。
 少し紹介すると、滝は動く・川は動く。とか、侵食前線を知る。とか、現在は峡谷の時代、過去は埋め谷の時代・・など。自然景観を見る際の、定石と手筋を紹介します。
<千葉県の滝・日本の滝>
 千葉県には120-130の滝がある。日本で一番滝の少ない県です。
 日本全体では、推定、3万ぐらいはあるでしょう。

■千葉県の滝位置図
■オトマッキーさんの滝の県別数

<滝を調べる>
1。調べている人は・・・日本で、3人ぐらいかな。 滝を探している人は・・・日本で、100人ぐらいかな。

2。地形を調べると何かいいことがあるか。

 ---自然を知る---- 現象を発生させる・規定する順序
 気候   →地史 →古地理 →地形 →土壌 →植物 →動物
 海水準       地質       水   
 地盤運動                      →人間
 火山活動






    ↑この内で、遠くから見てすぐ分かるものは? →それを、手がかりにして見ていくと分かりやすい。

<千葉県の滝のHP>
滝を観る--千葉県の滝を例に--- :滝の一覧もある
http://www33.ocn.ne.jp/~takisekibututiba/tibataki/


<千葉県の滝>
 普通の滝
(1) 隆起海食崖型の滝 (2) 地震隆起による平野型の滝、(3) 山の侵食前線に対応した本流・支流・懸谷型の滝:まあ普通の滝。
 人工の滝 川廻しによる滝
 特殊な滝 (1)河川争奪の滝 (2)崩壊による滝  

<滝の地形ひとめぐり>   
(1) 滝の定義 (2) 瀑布帯、上滝・下滝・本滝 (3) 平衡曲線、遷急点、遷急区間、侵食前線 (4) 滝の変化 できた理由(成因)→その後の変化(変遷)→今どう動く・止まる(現状) ------瀑布帯の総高、個々の滝の位置、滝面滝崖の微地形。
(5) 現状の観察
 水流の作る形 VS 岩質の抵抗する形 →
  面滝・線滝
  副滝      順層の滝・逆層の滝・造瀑層
  滝の止まる場所

<千葉県の滝のできた理由と年代>
 (1) 隆起海食崖の滝 5・6000年前
 (2) 地震隆起による平野型の滝 300年前、1500頃前
 (3) 山の侵食の滝-----気候変化と地盤隆起による----5・6000年より新しい。

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1. 未知の地形、滝
  a. 探検の楽しみ 
千葉県の滝の調査黎明期
富津市高宕急駟滝27mの上部を登る 
1980年君島安正氏撮影
観光でない滝めぐり
滝の地学観察会 富津市志駒 白糸滝の下滝
1999年 

滝は、川の地形のうち最も人気のある地形でしょう。
 『日本の名瀑』といった写真集や案内書も出版されていますし、『日本の百名瀑』というのも設定されています。『□□県の滝』といった県別の案内書も少数ですが出版されています。
私が担当している「滝めぐり」観察会でも多数の参加者がこられます。
 では、滝の良さとは何でしょう。水と岩と植生の織り成す美観、水の動きを表現する写真の素材、登る楽しみ、信仰の霊地としての特殊性など多くのことがあがるでしょう。
しかし、案内書の著者や千葉県の滝の愛好者が第一にあげる滝の楽しみというのは、未知の滝を探す探検の楽しみだと言います。

 もっとも、未知と言っても地元の人には当然知られていました。そもそも、房総の川は、水の利用を通して古くから人間の活動と深い関係をもっています。

 そのため、滝も人間の生活にかかわりをもち、人間による川の利用・川の改変の場となったり、あるいは、水神の霊地として信仰の対象となったりしてきました。

 しかし、滝は、地形図(2.5 万などの)をみてもその大部分は滝記号がなく、地図には示されていません。それだけに、沢登りの対象になっている川にある滝や、昔の地誌などに名勝として、あるいは信仰の対象地として記述されてきた少数の滝を除くと、地元の人しか知らない、知られざる滝が多く残されています。

 川歩きが好きで、探検がすきな方なら、まだまだ「未知の滝発見」のチャンスがあります。もっとも、「知られざる滝の下で人知れず野垂れ死」ということもかなりありえますが。 
 b. 房総には200以上の滝がある 
滝人間、木平氏の滝所在調査記録、
2001.6.20
新発見の滝が多い。天津小湊町神明川流域

そんなこんなで、滝のありそうもない千葉県でも滝好きの方が調べて下さった結果、たくさんの滝があることが分かってきました。
 大きな滝はなく、落差も最高30m程度で、水量も多いとは言えません。しかし、人のあまり立ち入らない緑の森林に覆われた渓谷に懸かる滝は、なかなか魅力的なものです。
 これらの滝は、大正年間の県内の郡誌に書かれていたものや、私の見つけた滝もありますが、一覧表に示した、君島氏はじめ数人の滝愛好者が房総の川をさぐり見つけ出した新発見の滝が沢山あります。
 今でも、数が増加しつつあり、現在の所は200 個以上の滝が知られています。

 というわけで、房総では大体の滝の所在は分かってきたといえますが、未発見の滝がまだまだ残されています。

 注、千葉県は小さい川にも滝があるという特徴がありますが、やはり、山が低く・浅く、全国的に見れば、滝のごく少ない県に属します。他の県の滝の数はこんなものではおさまりません。
 c. 滝の地学  

 しかし、滝の未知なところはその所在だけではありません。もっと未知なのはその内容です。
 実は、滝について特にその地学的な意味について一般の方々にはほとんど知られていないと言っていいでしょうし、学術書もほとんど書かれていません。 
 そのためでしょうか、滝の愛好者の方も、地学的に滝をみた方は少なく、今までの滝の本の多くは、滝そのものについては主観的な感想を述べているだけと言えましょう。
 つまり、滝が美しい、すばらしい自然物なことは確かですが、ではどんな自然なのでしょうか?。 滝は川の自然の象徴などということもありますが、では何を示しているのでしょうか。これらについて述べた本は今の所ありません。
 そんなわけで、滝の地形を中心に、定義・分類・成因・変化・分布といった滝の地学的な自然について私の考えをまとめてみました。
 滝を見る時に、あるいは、他の地形を見るときに参考になればと思います。

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